お酒大好き公認会計士のつぶやき

大阪で会計事務所を営む公認会計士です。自分の趣味や社会の出来事、特に会計や税金について書いていこうと思います。旅行も好きです。ラスベガスに毎年行くのが目標です。

債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務(DBO)等の計算における割引率~今の所、ゼロでもマイナスでもどっちでもOKです。

債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い(案)が、企業会計基準委員会(ASBJ)から出されており、意見の募集が行われていました。

結論から言うと、平成30年3月30日(3月31日ではなくて)に終了する事業年度までは、DBOの計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、利回りの下限としてゼロを利用する方法と、マイナスの利回りをそのまま利用する方法の、いずれかの方法によってよいこととなる見込みです。

何故かと言うと、国際的な動向も踏まえる必要があるが、欧州における議論でも、現時点において統一的な見解は定まっていないからだ、ということだそうです。

退職会計基準には、DBO計算における割引率は安全性の高い債券の利回りを基礎として決定する、とされているので、文字通り読めばマイナスで割引計算をすべきと考えられます。ですが、この基準自体がそもそもマイナス金利を想定して作成されていないとASBJが言っていますので、文字通り読まずにゼロで割引くことも間違いではないとされています。
また、退職給付適用指針では、DBOの計算に用いる割引率は、金銭的時間価値のみを反映した信用リスクフリーレートであり、金銭的時間価値のみが反映された信用リスクフリーレートとは、信用リスクが存在しない状態で時の経過に応じて価値が増えるレートを反映するものであるとされています。「マイナス金利=金銭的時間価値が時の経過に応じて減少」するので、信用リスクフリーレートはマイナスも有り得るとも考えられますが、タンスにお金を置いておけばお金は減らないので、信用リスクフリーレートはゼロが下限だということも考えられます。

いずれにしても、イレギュラーなことですので、欧州でもすぐには決められないようですね。日本も足並み揃えないとまずいということで、欧州の動向を待っている状況です。

現状はマイナス金利が小さいことが幸いですが、仮に数%までマイナス金利が膨らむと思うとDBOの計算に多大な影響を与えるので、方法が定まらないと、困ったことになってしまいそうてす。

金融機関は日本銀行に対する当座預金を有しているのであって、個人と違ってタンス預金が出来るものではありません。金融機関は、例えば、日銀にマイナス100という支払利息を支払うよりは、それよりも支払利息が少なくなるようにマイナス50の国債を運用しているので、それを鑑みると、信用リスクフリーレートはマイナスとなるので、マイナスの利回りで割引く方が望ましいのではないかなぁ、というのが個人的な考えです。

日本公認会計士協会の意見としては、どちらかを明らかにしないのはよろしくないので、結論を早く導いて欲しいということと、既に何れかの方法を採用している企業に対しては、既存の方法の継続適用を求めるべき旨が示されていました。

ASBJが結論を早く出せないのは仕方ないことですが、既に何れかの方法を採用している企業は、比較可能性が損なわれますので、既存の方法を継続適用するべきだと思います。