PCデポの開示情報を見て思ったこと
PCデポの販売方法が取り上げられて、ネット等での盛り上がりがすごいことになっていますね。株価も1週間前は1,400円でしたが、一気に1,000円まで下落していました。PCデポは東証一部の会社なので、有価証券報告書等で事業の内容や業績が公表されています。この会社の販売方法がいいか悪いかは横に置いて、会計士としては、どのような開示がされているかが気になったので見てみました。
平成28年3月期の有価証券報告書の業績の概要を引用しています。ちょうど、中段あたりの、『さらに、当社主力の~』という部分が、今回問題になった、解約に際して多額の解約料を請求していたとされるサービスのようです。
ちょっと、気になる部分があります。『デバイスや周辺機器を含むサービス一体型商品の拡大を図りました。』提供しているサービスは、保守契約だけではなさそうです。リースかレンタルもやっているのかな、と思いながら某掲示板を見ると、ニュースがありました。
例えば、5TBのHDDを買うと、1TBはHDDの現物で、残りの4TBについてはクラウド上のHDDがついてきて、このクラウドで提供されるサービスについて毎年利用料を支払うようです。
なるほど、リースというかレンタル事業もやっているようですね。どのくらいの規模なんですかね。有価証券報告書からは読み取れませんでした。
リース会計ではファイナンスリースとオペレーティングリースがあり、それぞれ会計処理が異なります。ファイナンスリースの条件としては、ノンキャンセラブル(契約の解約料がリースした商品を買うのと同等に必要)とフルペイアウト(リースした商品から得られる経済的な利益と費用をリースの借り手が実質的に負担すること)を満足する必要があります。詳細な契約がわからないので予測になりますが、先ほどの取引でいうと、クラウドのHDの利用をやめることは可能でしょうから、ファイナンスリースには該当しなさそうです。この場合はオペレーティングリースになります。
ファイナンスリースでもオペレーティングリースでも、リースの貸し手側は、リース資産の金額をBSに記載する必要があります。下の表は芙蓉総合リース株式会社の平成28年3月期のBSです。
賃貸資産と社用資産と書かれているので、リース事業用と自家使用で固定資産を分けていることがわかります。次の表は、PCデポの平成28年3月期のBSです。特に分別がされていませんね。
次に、重要な会計方針を見てみましょう。下は芙蓉総合リース株式会社です。こちらも、リース用と自家使用の固定資産で減価償却の方法が違っていることがわかります。
こちらは、PCデポの重要な会計方針。減価償却の方法は分けられていませんね。
という訳で、リース資産の”リ”の字も有価証券報告書には記載がなさそうです。違和感を覚えないこともないですが、きっと理由があって記載していないのでしょう。例えば、事業に占める割合がとても小さいので、記載していないのかもしれません。あるいは、私の取引の捉え方が全く見当違いなのかもしれません。
会計監査は、それぞれの取引の内容や契約を詳細に検討して、決算数値が正しいことを証明する業務です。検討することは多種多様に亘り、上場会社では年間で延べ何千時間もの作業が必要になります。従って、全くの外野の人間がとやかく言うものではありませんので、この辺でStopしておきます。