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お酒大好き会計士・税理士のつぶやき

大阪で会計事務所を営む公認会計士・税理士です。自分の趣味や社会の出来事、特に会計や税金について書いていこうと思います。旅行も好きです。ラスベガスに毎年行くのが目標です。

WIN5の高額配当の脱税 何故バレるか?(推測です) 競馬の払戻金への課税は今のままでいいのか。

税金 競馬

先日、大阪府寝屋川市固定資産税課の課長が、競馬のWIN5で高額馬券を何回も当て、4億円超の払戻金を申告せず、所得税約6200万円を脱税したとして、大阪地検に在宅起訴されたという出来事がありました。

WIN5はインターネット投票のみで購入することができる馬券で、指定された5レース(各開催場の準メインとメインレース)の1着を5レース全て当てる馬券です。この課長さんは、2012年に約5,600万円を的中し、14年にも当時最高の約2億3,200万円を的中したそうで、他の高額馬券も合わせると、これまでに4億2,000万円の配当を得たそうです。しかも、予想ソフトではなく、競馬新聞を睨めっこしながら、予想しているそうで、何たる勝負勘なのでしょうか。
WIN5は本当に当たりません。私の場合は最高で3レースです。5レースを転がしますので、1レースにつき3頭を選んだとしても、243通り=24,300円がかかります。資金が潤沢にないと点数を絞らざるを得ませんので、尚更5レース的中は難しいです。そんな訳で、競馬好きとしては、この課長さんの予想力は憧れを抱きます。

それでも脱税はいけません。ましてや、税金関連の部署にいる方であれば、納税意識については強く持ってほしかったです。

  • 競馬の配当金は何の所得として課税されるか。

これは有名ですが、特別な事情が無い限りは一時所得です。所得税法では、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得として、競馬や競輪の払戻金が例示されています。以前、競馬予想ソフトで殆どすべてのレースを機械的に購入して利益をあげていた方が、営利を目的とする継続的行為だから、一時所得ではなく雑所得だとして争った裁判がありました。結果、この裁判に勝訴して、競馬の払戻についても、特別な事情があれば雑所得だとされる画期的な判決が出ました。
今回は、特定のレースだけを自分の判断で買っていたので、一時所得と認定されたようです。

  • 買った馬券のどの部分が経費となるか。

雑所得の場合は、手にした払戻金と購入した馬券の総額の差額が所得となるのですが、一時所得はそうではありません。経費は、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限るとされています。つまり、1点100円を100通りの計10,000円購入したとして、そのうち1点が的中した場合の経費は100円となります。従って、残りの9,900円は経費にもなりません。従って、WIN5を1票的中したとすれば、経費は100円であり、手にした払戻金の殆どすべてが課税対象となります。

  • 課税所得はどうやって計算されるか。

一時所得=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円) です。
この2分の1が給与所得等と合算されて課税されるため、この課長さんの場合は、年度は違うものの、約2億円が課税対象となります。

平成26年度までの所得税率の最高税率は1,800万円超の課税所得に対して40%、そこから2,796千円を控除した額が所得税となります。ですので、給与所得やら色々控除も含めて約7,500万円位が納税額となると思われます。

  • なぜ脱税が発覚したのか。

裁判を担当した弁護士さんは、記録が残るインターネットを通じて馬券を購入していたため、国税当局に嫌疑をかけられた、と仰っているようですが、どうやって発覚したのでしょうか。
①うっかり口をすべらせた
同僚にうっかり口をすべらせて、高配当を得たのかを話したのかもしれません。市役所の固定資産税課勤務ですから、あっという間に話は広がります‥
②誰かの告発
ご近所さんはよく見ているものです。親兄弟奥さん子供、誰かが周りに話したのかも知れません。他人の嫉妬は怖いものです。
③銀行からバレる?
よく巷で言われます。銀行が国税に対して口座番号を提供している。或いは、国税が口座番号を吸い上げて監視していると。課税庁側もマイナンバーによる口座の管理ができていないので、口座の実態を把握できていないと思われます。口座の量を考えると、あんまり効果はないかも。
④支払調書でバレる?
JRAから国税に提出する資料として、支払調書があります。支払調書の対象者としては、馬主が得た賞金について報告する必要があります。払戻金を受けた人は対象ではないので、この線は薄いかな。
⑤高額払戻金の内訳書でバレる?
JRAも他の企業等と同様に、財務諸表を作成しています。高額払戻者の内訳は重要な情報だと考えられます。JRAの売上は2兆6千億円位ですが、単一レースで億円規模の払戻のある、インターネットを介した取引などは、内訳書が作成されているかもしれません。
⑥誤った確定申告を行った?
先程の裁判をした方は、多額の金融商品の損失を競馬の儲けと相殺した確定申告をしたため発覚したそうなので、普通のサラリーマンではやらない目立った確定申告をしたのかもしれません。

6つほどばれるかもしれないルートを上げましたが、当然国税は教えてくれないので、私は①②⑤ではないかと推測します。

  • 一時所得としての取り扱いが現代の競馬の払戻金に合致しているか。

一時所得がいつから制定されているのかは勉強不足で知りませんが、何十年も前の法律です。当時というか、インターネット販売の前は、窓口販売のみでした。80年代は、単勝複勝枠連しかありません。当然、今のように高配当の出る三連単WIN5なんていうものはありませんでした。
窓口販売だと、そもそも所得を把握できません。そんなわけで、実質的に競馬に関しては、一時所得の条文は死んでいたも同然です。
しかし、今はネットでの馬券購入が主流になり、課税庁側もあまりに度を過ぎた儲けに対しては課税するようになっています。

競馬法で定められていますが、払戻金は25%程度の寺銭(=JRAの儲け)が取られています。一方で、宝くじは、寺銭が半分位ですが税金は取られません。
このバランスを考えると一時所得の取り扱いも机の上では合理的だとも思われますが、現実には競馬の勝ちを確定申告する人は皆無でしょうから、あんまり効果的効率的とも思えません。

  • どのように課税するのがよいか。

課税庁が、大勝ちした人以外から税金を取る気がそんなにないなら、今のままでもよいかもしれません。より課税強化するのであれば、窓口・インターネット投票の払戻金から一定の払い戻し以上は源泉徴収して、税金を還付して欲しいなら確定申告をさせるというのも手だと思います。
結構面倒な手続きになるので、私の仕事も増えるかもしれません(笑