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お酒大好き会計士・税理士のつぶやき

大阪で会計事務所を営む公認会計士・税理士です。自分の趣味や社会の出来事、特に会計や税金について書いていこうと思います。旅行も好きです。ラスベガスに毎年行くのが目標です。

監査法人の決算書、見たことありますか?給料は?新日本を中心に見てみます。

上場会社や大規模な会社に対して会計監査の実施を主たる業務としている監査法人ですが、監査法人の決算書って見たことあるでしょうか?実は働いている職員もあまり気にしている人はいません。

監査法人公認会計士法により、監査済みの決算書を公表することが求められています。
大手3大監査法人だと、有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)が9月決算、新日本有限責任監査法人(以下、新日)と有限責任 あずさ監査法人(以下、あずさ)が6月決算となっています。

新日とあずさは9月初旬に決算書を公開しました。
新日については、今年は東芝の不正会計事件があり、金融庁から課徴金処分、業務改善命令、3カ月の新規契約の締結の停止といった厳しい処分を受けました。東芝は日本を代表する電機メーカーであり、最も内部統制が整備・運用されており、東芝の内部統制を他の上場会社は見本にするべきだと、業界内では言われていただけに、公認会計士業界には大きな激震が走りました。

そして、こうした処分は、新日の当期の決算書の数値の面でも大きな影響を与えたのではないかと推察しています。そこで、あずさの情報も一部利用しながら、監査法人の財務的な特徴と、新日の決算書を中心に読み解いていこうと思います。

監査法人の特徴-極めて高い人件費比率と、キャッシュリッチな資産f:id:umekisan16:20160913211358j:plain

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例として、あずさの直近のBSとPLを参考にしました。なんと売上高に対する人件費の額である人件費比率が70%を超えています。人件費比率は業種により様々ですが、多くても50%程度なので、極めて人件費の占める割合が高くて、労働集約されまくっている珍しい業界です
そして、総資産に占める現金・預金の割合が50%近くになっています。監査法人は人がいてなんぼですので、普通の会社のように投資するものがあまり無く、現金・預金が非常に多くなっています。


次に、新日本の決算書を見ていきたいと思います。
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決算書の前半には業績の概況が記載されており、当期末時点のクライアント数が、監査証明業務で113社減少(△2.8%)、非監査業務222社で減少(△6.6%)となっています。通常は大きな変動がない業界ですので、かなりの減少になっています。

減少要因としては、金融庁からの処分を受けて一部の会社で監査人を変更する動きがあったことや、非監査業務でも新規契約の締結停止の影響があったことが大きいと考えられます。

一方、当期の収入は1,064億円で前期と比較して74億円の増加となりました。何故こんなにも増えたのでしょうか?
心当たりがあります。そう、東芝です。東芝の2016年3月期の有価証券報告書を見てみました。新日に対する監査報酬等が明らかにされています。

前期は10億円、当期は・・・なんと53億円!!!、その他アドバイザリー報酬等も26億円と前期比9億円増となっています。
当期の売上増加の74億円のうち、52億円が東芝関係の増加となっています。

不正会計事件を受けて、東芝の2015年度の有価証券報告書の提出は、通常の6月から9月まで遅れに遅れました。報酬単価はわかりませんが、推定で3万~4万時間の追加作業が発生したと思われます。ご存知のように、会計監査は公認会計士の独占業務ですので、誰でも出来るわけではありません。つまり、既存の職員の方々で、この追加作業をしたことひなりますので、非常にきつく、困難であったと思われます。この増加は給料にも反映されると思うので後述することにします。

当期は、新日にとっては東芝の特需がありましたが、21億円の課徴金の支払があり、特別損失に計上されています。なんとか赤字決算は避けるために、社員の退職金制度の変更による戻し入れを特別利益に12億円計上していることが見て取れます。社員の退職金についても後で述べたいと思います。

さて、新日の進行期はクライアントの数が減った状態でスタートすることになります。減少したクライアントには大規模な上場会社も含まれているため、新日の売上は数十億円から100億円規模で減少するかもしれません。厳しい経営を強いられることになりそうです。

監査法人は人件費比率が極めて高いと述べましたが、平均給与はどのようになっているでしょうか。
これも決算書から伺い知ることができます。
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新日の当期の人員の内訳は社員627人、公認会計士と試験合格者 3,854人、監査補助員と事務職員 1,796人、全職員で6,277人となっています。
人件費は60,814百万円なので、単純に頭割りして平均968万円となりました。
実際は、監査補助員と事務職員の給料は高くないと思われるので、仮に600万円の年収とすると、会計士だけでは1,160万円程度の平均年収になるようです。
当期は東芝関連で異常に残業代を支払っているので、かなり上振れしたようです。
平時だとこんなに高くありません・・・。社員と言われる、高所得者の人たちの給料も含まれた平均ですので、私はこれよりもだーーいぶ少なかったです。

最後に、社員(パートナーと言うのが一般的です)の退職金についても述べたいと思います。
監査法人で社員というと、普通の会社でいう社員ではありません。彼らは出資者=監査法人の持分所有者(オーナー)です。
他の従業員は職員と言われます。職員の退職金は本当にすずめの涙です。私の退職金も少なすぎて、びっくりしました(笑

パートナーの方々は、社会的に大きな責任を負っているため、給料も高いですし、退職金も高くなります。
あずさとトーマツは退職金については、新日とは異なる会計処理を採用していて、パートナーの退職金の額がわからないのですが、前期の新日ははっきりとわかるようになっていました(当期からは会計処理が変わっていてわかりません)。
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社員退職引当金が335億円計上されています。前期の新日のパートナーの人数は640人でした。
これを頭数で割ると・・・
一人当たり平均退職金5,240万円!!

なかなかのものですね。これも平均ですので、多い人は退職金が軽く1億円超えますね。
こんなに稼げるように頑張りたいです。

というわけで、監査法人(申し訳ないですが、増減がはっきりしていたので、新日ばっかりになってしまいました)の財務的な特徴を書いてみました。