お酒大好き公認会計士のつぶやき

大阪で会計事務所を営む公認会計士です。自分の趣味や社会の出来事、特に会計や税金について書いていこうと思います。旅行も好きです。ラスベガスに毎年行くのが目標です。

2023年6月 ラスベガス旅行記④ MGMのRewardは辛くなり、そしてHyattとの提携は解消へ

My vegasというアプリでコインを貯めてRewardに交換することや、HyattグループとMGMが業務提携している話は2017年の記事でも触れました。

umekisancpa.hatenablog.com

1滞在で3つのRewardsを使うことが出来るのですが、当時はBuffetの無料も余裕で取れたし、2for1(2人で1人無料)も使って滞在中の食費がかなり浮いたのですが、コロナ後はBuffetをやっているホテルも少なくなり(MGM系列ではBellagioとMGM Grandだけ)、やっていても朝と昼だけというホテルが多いです。ARIAも大きなBuffetがあって雰囲気も好きだったのですが、今ではちょっと高級なフードコートです。人も全然いなくて超高額な賃料負担がかかるラスベガスの中心地で商売が成り立つようには全然見えませんでした。

そしてReward事態も改悪が進んでいてBuffetの無料は無くなっています。お飾り程度に2for1がありますが、いつ見てもBellagioのBuffetは売り切れています。たまにMGM Grandのはあってそっちは獲得できたりもするのですが、如何せん料理のクオリティが結構残念なので、あまりオススメはしません。まぁ、ラスベガスの物価はめちゃくちゃ高いので、2名で40ドル程度で食事が出来ると思えば長めに滞在するのであればありかと。

右側の写真のFree Playは3泊以上滞在しているホテル内のスロットで利用することができるのですが、2022年9月に行った時は2人で宿泊していれば、それぞれが複数個選べたのですが、なんと今回は1室につき1回に改悪されていました。前回はこのFree playを使って300ドル位のキャッシュになったのですが、今回はNYNYで100ドルだけしか貰えません。たまたま少し当たって180ドル位になったのでラッキーでしたが。

というわけで、3つ選ぶのも難しくなっています。もちろん少額のコインのやつを利用すれば使えますが、アイスクリーム半額とかそういうのを貰ってもあまり嬉しくもないので…MGMとすれば物価上昇への対応と、収益性を上げるための施策ですが、ささやかな楽しみなので、どんどん辛くなるのは切ないもんです。

また、MGMのTier Creditsというメンバーランクのポイントも全然つかなくなっています。2017年の記事では1ドルで25Tier Creditsのポイントが付く、と書いていましたが、今では1ドル4Tier Creditsだそうです。前までは1滞在で75,000ポイントのGoldどころか20万ポイントのプラチナまで行ったこともあるのですが、今回は9,000ドル持ってきて、毎日1,500ドルや2,000ドルをBuy inしてブラックジャックやクラップスを毎日最低5,6時間はプレイして、ホテル代や食事代を部屋付けして2,000ドル程決済したのに、たったの14,293ポイントです。エクスプレスチェックインが普及した今では、Goldの優位性であったホテルの長蛇の列に並ばなくてもいい、というメリットも失われてしまったので、上級ランクを維持する必要性も余りありませんが。

そして、ハイアットをよく利用する者としては非常に残念なニュースがありました。MGMとHyattグループの業務提携が2023年9月30日で解消されます。HyattのグローバリストであればMGMのGoldメンバーにステータスマッチができるのですが、それも無くなります。また、MGM系列のホテルに宿泊すればHyattの宿泊数にカウントされ、支払額についてHyattのポイントを貰うことができるのですが、長期間の滞在で宿泊数も稼げますし、ポイントもそこそこ稼げるので重宝していたのですが、これが無くなるのは結構キツイです。10月からはMGMはマリオットグループと業務提携するようです。この辺の変わり身の速さは合理主義的なアメリカらしいですね。マリオットで修行している人はHyattよりも断然多いでしょうから、これまでラスベガスに足が遠かった方も、修行がてら行かれてはいかがでしょうか。

今回は少しがっかりな話を紹介しました。次回に続きます。

 



 

日本M&Aセンターの調査委員会報告書に覚える違和感について

先日、M&A仲介最大手の日本M&Aセンターで過去5年間で83件の売上高不正計上が発覚したということで、2022年2月14日に調査委員会報告書が公表されています。今年は大企業で目立った不正が多いな、と思いながら報告書を読んでみたのですが、読んでいると違和感を覚えずにはいられませんでした。かなり大きく報道されていますので、読んだ方も多いと思いますが、皆さんどのように思われたでしょうか。大きく4点ほどあります。

 

①調査委員会のメンバーに監査等委員である社外取締役が選出されていること

この調査委員会の立ち位置がまず良くわかりません。外部の弁護士を中心に調査をされているのですが、日本弁護士連合会の「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」に沿ってメンバーが選定されているかがわかりません。同ガイドラインには社外役員は、直ちに会社と利害関係を有するとするのではなく、ケースバイケースで判断するとあります。

今回の場合はどうでしょう、監査等委員はあまり聞き慣れないかもしれませんが「取締役」です。従って、取締役会では議決権を有しており、毎月の取締役会で起案される議案に賛否の意思決定を行っているため、いくら社外取締役とはいえ、利害関係が無いというか、当事者そのものではないでしょうか。なので調査委員会の立ち位置がよくわかりません。

また、監査等委員による監査が実施されるのですが、監査等委員監査は取締役会により決議された内部統制システムを利用して監査を行うこととなっています。調査委員会報告書では再発防止策の提言も大きなテーマとなるのですが、有効な内部統制システムを構築するための具体的な提言がなされています。つまり、有効でない内部統制システムを利用して監査をした立場の人間が、再発防止策の提言を行っており、どんな立場で提言しているのかがよくわかりません。(自らへの戒め??)

 

②不適切報告に「架空案件」は無かったという結論

83件の取引について不適切な報告があり、うち70件については期ズレで売上が計上されたものの、13件については、一旦売上を計上して(取引の不成立等により)最終的に売上を取り消したということです。

報告書ではここをさらっと流しており、売上計上してから何らかの理由で売上取消をする実務となっていた、と記載されているのですが、監査法人と合意している筈ですが、このような売上計上自体が問題にならないことが不思議です。最終契約書の締結時点とディールブレイカーと呼ばれる取引が不成立となる時点を各担当者が判断した時点で役務提供が完了しているとのことですが、結局13件は取引が流れたり入金がなかったりで売上が取り消されています。

一般的にも収益認識基準的にも、一度売上を計上すれば、よっぽどのことが無い限りは売上を取り消すことはないのですが、13/83=15.6%もの取引が取り消されていて、架空売上とはいわないのですね。収益認識基準の当てはめは専門的すぎるので割愛しますが、事実として売上を計上できないにも関わらず、売上を計上することが架空売上だと捉えているのですが、私の感覚は違うでしょうか。これこそ不正会計の温床になるべきものだと思いますが・・・

 

③不正の発生要因がピンと来ない

経営陣は今回の不正に関しては一切の関与が無かったという結論となっています。481名のうち約80名が関与しており、組織的な不正であることは間違いありません。ただ、発生要因は個人的なインセンティブは寧ろ副次的なもので、部や個人としての業績達成を行い経営陣の期待に応えたいという心理的な欲求が重要な要素となり不正を行ったとあります。

不正を分析するときには不正のトライアングルという有名な理論があります。機会、動機(プレッシャーやインセンティブ)、正当化という3つの要素で考えるのですが、組織的に不正が行われておりますので「機会」はあります、部門や会社のために(嫌々ながらも)不正をする、そもそも余り悪いとも思っていない「正当化」があります、ただ、「動機」の部分は会社は急成長していて経営陣の期待に応えたいという心理的な欲求があったため。となるのですが、普通の精神状態であれば、経営者の期待に応えたい、「コロナに負けない」「コロナを言い訳にしない」という思いで営業部長を始めとして80名もの社員が不法行為を行うまでには至らないように思うのですが、本当の所を勘繰ってしまいます。

 

④再発防止策を受ける側の監査等委員が、再発防止を提言することにやっぱり違和感

再発防止策の9番目に監査・監督部門の体制強化、とあり、内部監査担当者は他部署を兼務している2名のみで、この体制では実効性のある監査は難しいとされています。

子会社や持分法会社が14社あって、従業員が800名以上いるのに兼務2名では脆弱と言わざるを得ないでしょう。ましてや、インセンティブ報酬が発生する給与体系となっているため、売上に関連する内部監査は特に重点的に実施する必要があるはずですし、内部監査が適切に実施されていれば、今回の不正は防げた可能性が高いと思われます。

また、監査等委員との定期的な報告に加え、適時報告の機会を設けて緊密な連携を図ることや、内部監査室の監査内容について、取締役会への定期的な報告等が必要である、というような趣旨のことが書いているのですが、これは内部監査と監査等委員監査をする上で必須の手続きなのですが、これまでなされていなかったのでしょうか。

有価証券報告書を見ると内部監査や監査等委員会監査はばっちりできている体制となっているようですが、実態としては監査等委員会の監査手続(少なくとも内部監査が適切に実施できていない状況を是正できていない)としても不十分だったように見受けられます。なので、自ら再発防止策を提言するのって、どうなのかな、と思ってしまいます。

 

少し話の趣旨は変わりますが、日本M&AセンターはJ-Adviserの資格を有しています。TOKYO PRO Marketへの上場を目指す企業は、東証に代わってJ-Adviserの上場審査を受け、審査をパスすればTOKYO PRO Marketへ上場することができます。

上場を目指している会社に不正を許さない内部統制の構築を促したり、内部監査を適切に実施するように、というようなことを指導していくわけですが、自身が組織立った不正会計という反市場行為を行い、この先どのようにクライアントに対応していくのでしょうか。東証としてもどういう対応を取るのかが気になります。

グレイステクノロジーの粉飾決算を巡って思うこと

最近はブログを書く人も少ないでしょうから、特に書くこともなかったですが、Newsなんちゃらというアプリからの引用で、本も何冊も出している有名な方が、決算書を見ればグレイステクノロジー(以下、G社と書きます)の粉飾はわかったかもしれないということを書かれていらっしゃったので、粉飾というのはそうじゃない、ということを、こっそり知っていただきたいので久しぶりに書くことにしました。

その有名な方曰く、債権の回転期間の長期化は粉飾の端緒と示すものだ、だが、翌期には資金が回収されている・・・(だったら不正の端緒は無くなっているのでは?)

では、一人当たり売上高を見ればどうだろう、すごい増えているから、ここを見れば粉飾しているかもしれない、と、気付くかもしれない。(債権が回収されていれば、そんな話にはならないのでは?・・・)

会計監査をしたことないのだと思うのですが、そんな適当な想像は書かないで欲しいです。世の中に一人当たり売上高が爆増している会社なんていくらでもあるでしょう。

監査意見は財務諸表分析をして出しているのではありません。まずは監査計画を立てます。この会社にはどんな特徴があって、どんなリスクがあるかを見極めます。そのために財務諸表分析を使うのは事実です。年間でどのような監査手続をすれば良いのかを詳細に詰めていき、その中でも売上は必ず不正リスク(粉飾リスク)が最も高いものと位置づけます。

取締役、営業部長、社員の方まで、ありとあらゆる人が内部統制やルールを守らない悪人として捉え、どんな悪いことをして粉飾をするかを想定して、それをどうすれば見つけられるかを腐心しながら監査手続を策定していきます。

貸借対照表の残高も当然に抑えにいきます。金融機関や取引先への残高確認を入手することができなければ、のっぴきならない事情が無い限りは監査意見を出すことはできません。在庫は棚卸立会をして押さえますし、固定資産は実査をして現物の確認を行います。その他の重要な勘定残高は残高を抑えに行きますし、損益計算書の項目も当然に取引テストをし、分析をして重要な虚偽表示がないかを一つ一つの勘定科目に落とし込んで監査していきます。

某T社の粉飾決算や、よくある話では在庫、固定資産、のれん、そういった資産が投下資金を回収できない場合の見積り、つまり減損会計をどのように適用するかで監査法人と戦うことになります。過去、現在、将来の事業計画の妥当性を戦わせながら粉飾していくわけです。そういった場合、粉飾したい側には相当の手練れが必要なわけですが、相当な手練れを引き寄せられる大規模で資金が潤沢な会社がそういうことをするでしょう。某T社もそうでしたね。

では、G社の場合はどうでしょう。

担当していた監査法人は乱暴に無能といって良かったのでしょうか。必要な手続きをして尚、不正を発見できないことは無能なのでしょうか。(メディアの論調はいつもこうですね、監査法人は必要な手続きはしていた、だがそれでいいのかと・・・)

三者委員会報告書は125ページほどの大作でありましたが、これは答えなので、監査現場では知らないものとして捉えなければいけません。

 

G社の場合、粉飾の多くは実態を伴わない架空売上でした。見積書、発注書、契約書、検収書といった売上検証の基礎資料の偽造がありました。監査人は偽造を見破る専門家ではありませんので、会社から提出された資料を是とするのは監査手続としては問題ないはずです。

この場合何が起こるかというと、一般的には架空売上であるため債権が回収できないという問題が起きます。従業員がこれをすると、普通は数千万円で資金が枯渇するでしょうから、雪だるま式に大きくなることがありません。一時期問題になった循環取引も雪だるま式に大きくなる性質がありますが、今の監査手続では詳細には言えませんが、基本的にはカバーされています。

ただ悲しいかな、前例を見ないほどのモラルの無さで創業者の社長や取締役という上級経営者が不正に加担し、自らの株式やストックオプションを通じて得た資金を自転車操業するという方法で雪だるまは大きくなりました。創業者がお亡くなりになったことでこの不正は成立しなくなりましたが、存命であれば、あと何年も何十億円も不正は続いたでしょう。

周到に準備された売上に関連する資料、外注先への偽造された資料、多額に及んだとしても回収されてしまう売上債権の回収、そして質問をすれば最もらしい回答が返ってくる・・・自分が担当して不正を見つけられるかは正直自信がありません。怪しい端緒は掴んでいることは第三者委員会の報告書からは伺い知れましたが、決定打はありませんし、今の監査手続はお金持ち経営者が自爆不正することを想定できていません。

某元会計士は、粉飾先の会社に「おたくはこの会社とこんな取引をしているか??」と聞けば不正なんてすぐに見つかる、ということを仰っていましたが、監査法人は監査契約を前提に仕事をしているのであって、国税局のように反面調査をするような強権的な権利は何ら有していませんから、そのような監査手続は無理です。

ただ、そうであっても監査法人は不正を見つけていかねばなりません。

G社の場合は常勤監査役が元営業担当者で、そもそも常勤監査役としての地位を得る資格があったでしょうか。社外取締役や社外監査役には公認会計士や弁護士は一人もいませんでした。調べたことはありませんが、恐らく上場会社でそのような会社はほぼないでしょう。そのようなガバナンス体制に対してどのようにアプローチしていたでしょうか。また、内部監査担当者は事業部門と兼務しています。JSOXの監査を実施する際には、監査法人の手続として内部監査の業務に依拠することがありますが、内部監査の実施状況はどうだったでしょう、内部監査について十分に評価していたでしょうか。ちなみに2022年2月に不正による第三者委員会の報告書が出た買収や事業承継を仲介とする某上場会社も内部監査は不十分だったようです。

そして、極めつけは創業社長の配偶者が管理部門の重要な役職に就いていました。相当昔から管理部門に創業者の親族が関与することは上場審査上で最も忌避されることと認識していますが、なぜかG社では許されており、しかも上場審査も通っています。建前上は、組織図に存在しない総務部長という役職だったそうですが、往査をしていて社長の配偶者が管理部門にいることに疑問がなかったでしょうか。絶対に許容されることではないという認識は相当数の公認会計士は有しているでしょう。

三者委員会の報告書を読む限りは、創業者の社長と監査法人の間にはコミュニケーションの余地がなかった(つまり、監査法人のことを相当軽視していた)ように記載されていますが、監査法人側は経営層に対してどのように接して、どう感じていたでしょう。

(他にも、毎期毎期30%程度で伸びていく事業に対してどのように評価していたかということに興味はありますが、専門的な事業の話は、監査人は事業の専門家ではないので、会社の説明が合理的であれば、一定の合意をせざるを得ないかと思ったりします。)

と、直接的な不正を検出することは難しいのですが、企業の内部統制の権威として有名な先生は、内部統制を構成する要素の一つとして「統制環境」が最も重要だ、と事あるごとに発言されておられます。

行きつくところ、このような従来想定していないような不正に対しては、経営者の姿勢や統制環境を突き詰める、会計監査人・監査役・内部監査の三様監査の実効性を上げるといった監査手続が最も必要だと考えます(といっても、G社では監査役も内部監査も機能していませんでしたが・・・その状態を是正することを含めてです)。

コロナ禍でリモート監査が増えており、監査対象会社に往査する機会が相当数減っています。G社の場合は数年前から不正は続いていたのですが、直近で不正の金額が増加していたり、他の会社でもニュースになるような不正粉飾が増加しているように感じます。

日々のミーティングや会議はwebでこなせるようになりましたが、監査はAIとリモート業務に任せてよいのでしょうか。AIの監査ツールに仕訳や試算表を読ませると不正がわかるそうです。リアルタイムで起きている新種の手口も網羅的に100%検出してくれるのでしょうか・・・個人的に信用できません。

監査は英語でAuditですが、綴りの通り、聞くこと・聴取することが起源となっています。監査人が経営層や重要な役職者とよくコミュニケーションをし、一定数の往査を行うことで、常にチェックされているという緊張感を被監査会社に持っていただくことが、入り口として重要な不正を防止することになるのではないかと思う今日この頃です。

確定申告が近づいて来ました。仮想通貨(暗号通貨)取引やってる人、注意点の把握と対策は出来ていますか??

個人事業主やサラリーマンの方で医療費控除・スイッチOTC薬控除・ふるさと納税・住宅ローン等の年末調整がされていない方(もちろん、厳密には他にも対象となる方はいらっしゃいますが・・・)、又は他の所得が20万円以上発生している方は、確定申告が必要です。

2018年は2月16日(金)~3月15日(木)が確定申告の期間となっています。無申告の場合や期限に間に合わない場合には、相応のペナルティが付く場合がありますので、正しく且つ期限内の申告を行いましょう。

2017年は仮想通貨取引の取り扱いが国税庁から発表されました。以前の記事でも触れましたが、我々納税者にとって一番不利な雑所得となっています。

ざっくり言うと、たとえ取引をしていて損が出たとしても、同年の他の所得を打ち消すことも、また、来年の雑所得と打ち消すことも出来ません。所得が出れば他の所得に加算して税金計算がされます。

なお、この記事の時点では会計上の取り扱いは決まっていませんでしたが、今は会計処理も定められています。

 

umekisancpa.hatenablog.com

 私もお小遣い程度で仮想通貨取引やっていますが、値動きがすごいですね。上がった時の爆発力もすごいですが、下がった時のナイアガラもまたすごい。お小遣い程度なので基本放置でいいのですが、本格的にトレードすると、売り時や損切りのタイミングが難しそうだ。

 

本題ですが、仮想通貨については、どの取引や、どの部分が費用や利益として確定申告しないといけないかを明らかにしないといけません。

所得=利益-費用 です。

(厳密には、益金と利益、損金と費用は異なりますが、個人レベルではそんなに変わらないので、ここでは気にしません。)

 

まずは、解りやすい費用から。ズバリ、仮想通貨取引に関して直接的・間接的に掛かったものが対象となります。

直接的な費用は、取引手数料が挙げられるでしょうか。

間接的な費用としては、関連する書籍代・セミナーへの参加費、その交通費や懇親会費など。また、購入したパソコン代金、通信費・電気代・家賃なんかの一部(実際に仮想通貨取引に充てられている面積や時間で配分します。)についても経費として認められると思われます。パソコンは普通のスペックで一般的な価格だと概ね経費になると思いますが、マイニング用のPCとか、高スペックで高価格のものは固定資産として処理する可能性があるかもしれません。この場合は、買った年に全額費用として処理できないので、注意が必要です。

 

次に、利益です。ここが問題ですが、2017年12月1日付で国税庁から計算方法の例が出ています。https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf

この例から簡単に要約すると、

  1. 現金にした場合
  2. 商品(例えば、家電や食品や車など)にした場合
  3. 他の仮想通貨にした場合
  4. マイニングで仮想通貨を得た場合

 が、所得(勿論、値上がり差額分や、経費を引いた部分です)になるとされています。

1の場合には、明確にキャッシュになっているので担税力はあります。2の場合も実際のモノになっているので、まぁ担税力があると言えるでしょう。

3や4の場合はどうでしょう。

3は買ったときのA仮想通貨の金額と、海外の取引所口座に送金した時のA仮想通貨の時価の差額になるかと思われます(日本の取引所で仮想通貨→仮想通貨の取引はあるのか知りませんが、その場合も買った時と、交換した時の価格差になるかと思います)。

4はマイニングで得た仮想通貨の時価から、マイニングにかかった費用を引いた差額が所得になるかと思います。

3と4はいずれも仮想通貨のまま保有されています。これって担税力があるのでしょうか?

仮想通貨で納税していいというなら担税力がありますが、今の法律では現金でしか納税が認められていません。現金として実現していないものに税金を負担させるのが違和感ありありなのですが、仕方ないんですかね。税制度が追い付いていない感じがします。

なお、分岐等によって新たに仮想通貨を得た場合は、現金やモノにした時点で所得になるとのことです。

ちなみに、仮想通貨を貸し出すことで利息を得るレンディング取引も4の取引と類似しているので、同様の取り扱いになると個人的には考えます。

 

最後に取引の網羅性について。正確な確定申告をするためには、年間の取引を正確に把握しておく必要があります。何カ所かの取引所の口座を開設してみましたが、証券会社の口座とかと違って、評価損益も解りにくいし、取引履歴もいまいちわかんないサイトが多いですね。

今のところ、取引を網羅的に集計してくれるようなツールが見当たりませんので、自分でエクセル等で管理する必要がありそうです。が、これはかなり面倒そう。

 

ということで、簡単にですが注意点を挙げてみました。

税制にあいまいな点も多いですので、2017年に仮想通貨でそれなりの所得が発生した方は、お早めに税理士さんと相談(私もその端くれですが・・・)し、確定申告のご依頼をされることをお薦め致します。

 

 

仮想通貨(暗号通貨)の税金の取り扱いが決まりました。予想通り一番税金取られる雑所得。会計上の取り扱いまだ決まってません。

2017年は仮想通貨(英語を訳すと暗号通貨だと思うのですが)が、世の中で本格的に知られるようになった年だと思うのですが、この9月に税金の取り扱いが定められました。

10何年か前に、初めてアメリカで暗号通貨が出来たときは、作ったエンジニアが10,000コインをピザ1枚と交換したという話はあまりに有名ですが、2017年9月の時点だと約50億円で取引されていることになります。

日本でも、多額の利益を得た人がいると言われています。私も数年前の異業種交流会で、ちょー胡散臭い社長と仰るお兄さんに、「これから、ビットコインは絶対儲かる。是非やってみて。」と言われました。その時は、なんやねんそれ、嘘つけ、と笑っていました。多分当時は1単位数千円程度だったと思われるので、そのお兄さんは今億万長者だと思います。自分のセンスの無さが悲しい…

で、ここ数年暗号通貨から得た利益を税金の取り扱いとしてどうするかという話が出ていましたが、こういう類の利益に対して、我が日本国が優しい税制にするわけがないと個人的に確信していたので、思っていた通り一番税金を取られる『雑所得』になりました。

雑所得っていうのは、他の9種類の所得には含まれない所得で、例え損失が出ても他の所得と損失を打ち消しあうことができません。また、他の所得にあるように、ある程度税金を抑えるような配慮がありませんので手元に入った利益がまるまる税金かかります。最高税率で大体50%位税金で持っていかれます。先物取引やFX取引と同じ取り扱いです。

で、この利益がどこまでを指すのかが問題なんですが、私は普通に取引所等での売買差益(ドル取引でいうと、1ドル100円で買って110円で売った差額の10円)だけだと思っていました。

ですが、よく国税庁の通達を見るとなんか違うような気がします。引用しますと、こう書いてます。
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。』

使用することで生じた利益…
これがどこまで含めるかで、近い将来、裁判とかで揉めそうな気がプンプンしますね。

素直に読めば、10コインを千円で入手したとして、コインの価値が上がって10万円になったとします。それで10万円の品物を10コインで買ったとすれば、差額の99,000円にも税金がかかるような気もします。

ドルやユーロの通貨ではこんな取り扱いはされませんよね。旅行の為に為替が有利なときに両替して、現地で使っても、その為替の差益分は課税されません。違和感ありありの表現です。もう一歩踏み込んだ解釈を望みます。

これまで税金(税務会計)の取り扱いを書いてきましたが、企業会計基準では検討はされていますが、まだどのような会計処理をするか決まっていません。

企業会計基準は会社のありのままの状況を表現するためのツールですが、世界的な足並みが揃っていないようです。
確かに今の会計基準だと、暗号通貨っていうものは、居場所がないようです。個人的には、現状の外貨換算基準と似たような基準になると思いますが、どうでしょうか。

会計基準が決まったら、また紹介したいと思います。

東芝-遅れに遅れて2016年度の決算発表。まさかの??不適正ではなく限定付適正意見。政治的な決着が伺えます。

2017年8月10日、東芝の2016年度の有価証券報告書及び2017年度の第1四半期レビュー報告書が提出されました。

東芝は、米国会計基準に準拠していますので、有報の本来の開示期限は決算日から45日なので、80日近く遅れた適時開示ということになります。

報道にもあるように、監査人のPwC あらた監査法人(以下、あらた)は、16年度の決算書について限定付適正意見、同年度の内部統制報告書については不適正意見の監査報告を、17年度の第1四半期については、限定的結論が表明されています。

 

限定付適正意見は、監査論の勉強ではよく学習しますが、現実世界では滅多なことではお目にかかることが出来ませんので、引用してみたいと思います。

 

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かなり詳細に、しかも相当会計について解っていないとチンプンカンプンな事が書かれていますが、簡潔に言うと、限定付意見となった根拠は、WECが16年度に計上した減損損失6,526億円のうち、相当程度ないし全額が15年度に計上するものである(つまり、計上する会計期間がズレている)と、監査人であるあらたは判断したということになります。

東芝は、あらたの判断について真っ向から対立していたのですが、結局、あらたが出した結論を覆すことが出来るような論拠であったり資料であったり、いわゆる監査証拠を示すことが最後まで出来なかったということになります。

東芝の適時開示では、この期に及んで、我々の判断は正しいけれども、あらたに否定されたという旨の記載がされていますが、東芝とあらたの対立の深さというか激しさを物語る異様な文面が見て取れます。

この影響は、内部統制報告書にも及んでいます。上場会社の会計監査人は、監査報告書だけではなく、内部統制報告書という、会社の財務報告に関連する内部統制がうまく機能しているかということについて、会社が判断した評価についても監査意見を出します。

東芝は我々は正しいというスタンスですので、内部統制は有効であるという評価をしているのですが、あらたは減損損失の計上時期が間違っているという立場ですので、会社が内部統制は有効であると言っているけれども、こんな多額の損失額が正しい時期に計上されていないのだから、それはちゃんちゃらおかしい、ということで不適正意見が出されています。

内部統制が不適正意見で、決算数値が限定付適正意見なのは変だ、と思うかもしれませんが、極論すれば、内部統制がズタボロであっても、監査人が監査の結果見つけた誤りを、会社が全て修正してしまえば、決算数値は適正意見ということはあり得ます。

 

決算報告の直前に、あらたが不適正意見を出すのでは、という報道がありましたが、限定付適正意見と不適正意見がどう違うのか、ということについて触れたいと思います。

下の図は、監査報告に関する基準である、監査基準委員会報告700からの抜粋ですが、黄色くマーカーを塗った部分が今回の監査意見です。

限定付適正意見と不適正意見の分かれ目は、財務諸表の重要な虚偽表示(今回の場合は減損損失の計上時期の誤り)の財務諸表に及ぼす影響が、重要かつ「広範」であるかどうかとなります。

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「広範」であるか、ここにせめぎ合いがあったと考えられるのですが、監査基準の定義上は以下のようにされています。

「広範」-虚偽表示が財務諸表全体に及ぼす影響の程度、又は監査人が十分かつ適切な監 査証拠を入手できず、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが財務諸表に及ぼす可能 性のある影響の程度について説明するために用いられる。  財務諸表全体に対して広範な影響を及ぼす場合とは、監査人の判断において以下のいずれ かに該当する場合をいう。

① 影響が、財務諸表の特定の構成要素、勘定又は項目に限定されない場合

② 影響が、特定の構成要素、勘定又は項目に限定される場合でも、財務諸表に広範な影響 を及ぼす、又は及ぼす可能性がある場合

③ 虚偽表示を含む開示項目が、利用者の財務諸表の理解に不可欠なものである場合 

広範の定義を書いているのに、②で広範な影響と書いていて、最早「広範」が何かがわからなくなってきます・・・

今回の場合は、WECの減損損失の計上時期という、特定の勘定科目や項目に該当するとは思いますが、③がなかなか致命的ですね。

常識的な肌感覚では、連結売上高が5兆円の会社で6,500億円が間違っていたら、財務諸表の利用者は誤った意思決定をすることになるでしょうから、不適正意見を出すことになると思います。

が、現実には限定付適正意見となりました。何故でしょうか?

報道では、あらたが間違っている金額を正確に言えないから、と見ましたが、見積の問題なので、正確に言い当てることは困難でしょう。監査報告書にも書いてあるように、6,500億円のうちの相当程度か全額が間違っているということについては心証を得ていますので、細かい金額がどうだろうと、どっちにしても決算数値が多額に間違っていることには変わりはありません。単なる理由付けのための方便に思えます。

東芝、あらた、銀行、金融庁東証、etc、様々な立場からソフトランディングを図った形跡が伺えますが、残念ながらこれ以上はわかりませんね。あらたはアメリカのPwCの影響を強く受けていると言われていますので、訴訟リスク等も勘案すれば不適正意見も当然かと思ったのですが。

 

 最後に、個人的には監査意見を「お墨付き」というような、カジュアルで誤解を招く新聞等の表現はやめて欲しいのですが、敢えて使わせてもらうと、16年度の最終赤字9,657億円のうち、約6,500億円の損失が誤って多額に計上されていること、15年度の最終赤字4,600億円のうち、約6,500億円の損失が少なく計上されていることを除いては「お墨付き」を与えた、ということになります。

うーん・・・このお墨付きのありがたくない感じ、正しい額の方が少ないのでは、と複雑な気持ちになりますね。

 

 

平成29年3月期から、決算短信・四半期短信の作成要領が改定されます。自由度の向上は実効性があるのか?投資家への影響は?

 先般、東京証券取引所から、決算短信・四半期決算短信作成要領等が改定されて、平成29年3月期から適用されることが、発表されました。

 以下のような趣旨により改定されることとなりました。

政府は、『日本再興戦略』改訂 2015 において、持続的に企業価値を向上させるための企業と投資家の建設的な対話を促進する観点から、企業の情報開示について統合的な開示の在り方を検討することを求めています。これを受けた金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループは、会社法金融商品取引法、上場規則に基づく3つの制度開示について、全体としてより適時に、よりわかりやすく、より効果的・効率的な 開示が行われるよう、開示に係る自由度を向上させることを提言しています(2016年4 月 18 日)。 そこで、当取引所では、決算短信・四半期決算短信(以下「短信」といいます。)の様式について使用強制をとりやめることで、自由度を高めることとします。

 この改定の主なポイントとして4点挙げられます。

  1. 表紙ページである、サマリー情報について様式の使用義務を撤廃する。
  2. 短信には速報性のある項目のみが開示される。
  3. 連結財務諸表と主な注記について、投資判断を誤らせる虞がない場合に限り、開示可能になった時点での追加開示を容認する。
  4. 決算短信には監査が不要であることを明確化する。

 この改定でどのような影響があるのか、考察してみたいと思います。

 1点目、サマリー情報の様式は、何年もの間にわたって記載事項が練られており、その結果として、現在の雛型になっています。投資家目線では、どこの上場会社を見ても、必要な情報が一覧性を持って比較できますので、既に完成された領域にあると思います。今更、サマリー情報の様式を自由にしたところで、あまり意味がないように思われます。

 2点目、速報性のある項目のみ短信で開示する、ということで、経営方針や、ひいては連結財務諸表自体も、有価証券報告書や四半期報告書のみで開示可能となるそうです。短信に連結財務諸表が開示されないというのは、にわかに信じられませんが、こんな事をする会社があるのでしょうか。

 3点目、速報性を上げる為、という趣旨でしょうが、重要な事項は織り込んだ上で開示すべきですので、実務的に定着するとは考えられません。無責任な開示は、投資家や利害関係者からの疑念を抱き、企業価値を貶めることになりかねません。

 4点目、こんなことは今更書かれなくとも当たり前のことです。監査法人は、有価証券報告書や四半期報告書に対して、意見を表明するのであって、決算短信について意見は表明しません。ただし、実務的には、短信と有価証券報告書や四半期報告書の内容が大きく異なることは、会社側から非常に嫌がられますので、監査法人と細かく内容を詰めた上で短信は発表されていますし、これからも変わらないと思われます。その意味で、東芝が17年3月期の第三四半期の業績を、監査法人との合意を得ることなく発表したことは衝撃を受けました。

 という訳で、今回の短信の作成要領の改定によって、決算短信の自由度が向上することが、効果的・効率的な開示に実効性を持つのか疑問に思います。あまり意味のない改定に思えて仕方ありません・・・従って、追従する企業も少なく、投資家への影響も少ないのではないかと思っています。

 決算短信の速報性は重要ですが、持続的に企業価値を向上させる、という観点では、情報の正確性が、速報性以上に求められると思っています。

 現在の財務諸表には、税務会計では見られない見積もりの要素が沢山あります。各種引当金、投融資の評価、繰延税金資産の回収可能性、固定資産の減損、訴訟対応 etc…

 見積もりの要素は、財務諸表に与える影響が大きいものが多く、時と場合によっては会社の存続を左右するような事象もあります。速報性を求めるあまり、特に見積もりの要素に関して、監査法人との合意なくして決算数値を発表することは、避けなければならないことです。情報が正確でないために、投資家や利害関係者が深刻な損害を被ることは、あってはならないことです。

 企業の開示情報がどうあるべきかを、改めて考える機会になりました。この改定を受けて、各企業が実際にどのような対応を取るのか、注目していきたいと思います。