お酒大好き公認会計士のつぶやき

大阪で会計事務所を営む公認会計士です。自分の趣味や社会の出来事、特に会計や税金について書いていこうと思います。旅行も好きです。ラスベガスに毎年行くのが目標です。

内部留保金への課税はありなんですか?

企業の内部留保金に対して課税をしよう、という議論に対して、日本商工会議所の会頭が反対している、という記事がありました。

そりゃそうでしょう。会頭に全面的に賛成です。
内部留保金を何だと思っているのでしょうか?そもそも、会計的には内部留保金なんていう言葉はありませんが、恐らく繰越利益剰余金を指すのだと思います。

繰越利益剰余金は、企業が一生懸命事業活動をして、利益を上げ、税金を払い、株主への配当を払った残りの、過去からの累積額です。これは、現金の塊でもなんでもありません。なので、こんなものに担税力なんてありません。

どうやって課税するのかが謎なのですが、繰越利益剰余金の額によって一定率をかけるのでしょうか。租税回避のために、利益剰余金を資本に組み入れる事業者も出たりするでしょうし、あんまりいい結果を想像できません。

税金を取りたいのであれば、時代の潮流には反しますが、法人税率を上げればいいだけの話だと思います。

アメックスゴールドのプロモーションに参加しました。雨金祭りのポイントの会計処理と税金について

一部のクレジットカードマニアやポイントマニアに大きな話題となっている、通称、「雨金祭り」ですが、私もこのキャンペーンに申し込んでアメックスゴールドカードを作ることにしました。初年度年会費無料で、公共料金等の支払で最大6万ポイントは本当に太っ腹なキャンペーンだと思います。

クレジットカードマニアというほどでもないですが、ANA VISA GOLD、ダイナース、DELTA AMEX GOLDの3枚を含めて、計6枚カードを持っています。アメックスゴールドの特典で、気になるものもありますので、年会費無料のうちに他のカードと比較しながら使ってみたいと思います。

何故、会計と税金の話を持ち出したかと言うと、5月末までは獲得ポイントに上限がなかったことと、極めて安い出費でポイントが獲得出来るらしく、何千万・何億・何十億ポイントを入手した人がいるとのことです。アメックス側の制度不備もあるのですが、およそ通常ではありえないマイルの獲得です。そうなると、アメックス社の会計数値が歪められる可能性があり、個人の税金がどうなるかも気になります。そもそも有効なポイントなのかという点については、当事者同士の話なのですが、今後のアメックス社の対応も気になります。
(意見の部分は全て個人的な見解です。)
●ポイント制度の企業会計における会計処理について
まずは、ポイント制度について、企業会計における会計処理について簡単に説明します。昔から世の中には多種多様なポイント制度がありますが、ちょっと前までは、あまり統一的な会計処理はありませんでした。日本の会計基準には現在もポイントに係る会計基準はありません。売上をマイナスしたり、販売促進費としていたようです。ちょうど会計士の受験勉強をしていた10数年前からポイントの会計処理について問題に出た記憶があります。

今はどうかと言うと、多くの会社は引当金処理しています。企業会計原則注解の引当金の要件、というめちゃくちゃ古いですが重要な基準を論拠として引当計上しています。4つ要件がありまして、①将来の特定の費用②発生が当期以前の事象③発生可能性が高く④金額が合理的に見積れる。という全ての条件を満たす必要があります。コンピュータが発達していない時代はシステムでの計算が難しかったので、③や④の算定が困難でしたが、今は過去のポイント利用実績をすぐに計算できるので引当処理がされます。仕訳でいうと以下の様になります。

(例)商品を10,000円で現金で販売して1,000ポイントを付与した。1ポイントは1円であり、当期に1,000円の商品に600ポイントが利用され、来期以降に残りの全額が利用されると見込まれる。
【ポイント付与時=販売時】
(借方) 現金 10,000 (貸方) 売上 10,000
【ポイント利用時】
(借方) 販売促進費 600 (貸方) 売上 1,000
現金    400
【期末決算時】
(借方) 販売促進費(ポイント引当金繰入額) 400 (貸方) ポイント引当金 400

国際会計基準だと、結構会計処理が異なっていて、日本基準との違いが面白いのですが、長くなります。他に解説しているサイトもありますので、もしどなたかからリクエストがあれば書くことにします。

アメリカン・エキスプレスは非上場会社ですので、財務数値は公表されていません。が、先ほどの設例の「販売促進費」の所に、相当多額の金額が入ると、営業利益以下の利益を減少させる要因になります。当然、経営者は株主や金融機関等の利害関係者に対して、そのような事態になった経緯を説明する責任を負います。仮に、信じられないほどのポイントの話が本当なら、首は1つで足りるでしょうか‥

●個人が得たポイントは課税されるか?
多くの人が様々なポイントを保有していますが、確定申告している人はいないと思います。何故なら、所得税法国税庁の通達等にポイントやマイルに対する取り扱いの規定がないからです。

①そもそもポイントは所得になるのか、②所得だとすると、何の所得になるのか、③所得だとしていつの時点で課税するのか。という3つの論点を挙げたいと思います。

①について、例えば、ヨドバシカメラのポイントを考えてみます。恐らく他のポイントには交換できないと思うので、ヨドバシカメラでしか使えません。これは所得になるでしょうか?私見では、ヨドバシカメラに対する前渡金に当たるのではないかと思います。何故なら、もらったポイントは次回以降の買い物にしか使えず、ポイント部分は本当は10%割引で買えたけれども、10%部分は次回の買い物の為にヨドバシカメラに渡していると考えるからです。この場合は所得にならないと考えます。
では、ANAのマイルはどうでしょうか。これは、貰った時点で、飛行機のチケットや買い物代として換金できます。換金性が高いために所得になるのではないのでしょうか。

このように、ポイントといっても、それぞれに特徴があり、ポイントの交換なんかも含めると、さらに複雑になります。課税は公平に行うという趣旨を鑑みると、課税庁としても安易な見解は出せないと思われます。

次に②について。ポイントの中には換金性が高く所得になると考えられるものがあると述べました。では、何の所得になるでしょうか。一時所得か雑所得が本命ですが、私は一時所得だと考えます。
一時所得はその名の通り、労務の対価ではない一時の所得なんかをいいます。そして、次のようなものがあります。
(1) 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)、競馬や競輪の払戻金
(2) 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
(3) 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。)
(4) 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金
(3)がばっちり該当しそうです。因みに、雑所得は他の所得のどれにも該当しない所得です。

最後に最も重要な③です。いつ課税するでしょうか、貰った時か、使った時か?色々ありますが、クレジットカードのポイントや航空会社のマイルは換金性が高いので、私は貰った時に課税すると考えます。

一時所得は50万円が控除されて、控除した後の半額が他の所得に合算して課税されます。ということは、時価50万までは無税です。アメックスの1ポイントや1マイルが何円の価値があるかを測定するかが、そもそも論で難しいですが、仮に0.5円としましょう。
ANAで成田からニューヨークのJFK空港までをダイヤモンド会員がファーストクラスに乗って片道22,231マイルです。月2でファーストクラスでNY出張や旅行している人でやっと100万マイルに達成する位です。こんな人世の中にそうはいないでしょう。しかも、課税するには一時所得がそれなりになければならないので、年間数百万マイル以上は稼がないと、税務調査の対象にもなりません。

ということは、そもそも課税できる人が世の中にいない可能性があります。イメージでいうと、カードを年間5億円決済して、飛行機のファーストクラスをバスみたいに乗っている感じでしょうか。この点からも、所得税法等での定めがないと考えられます。

しかし、アメックスの不備があったとはいえ、何千万・何億・何十億ポイントと稼いだ人がいる場合はどうでしょうか。アメックスを始め、クレジットカードのポイントは、様々な方法で、現金やそれと同等なものに換金できるので、得られた所得はすごい額になるでしょう。所得税最高税率は住民税と合わせて55%にもなるので、放置すると相当な税金をとりっぱぐれるのではないでしょうか。また、課税の公平性からも放置はよくないでしょう。

もしかしたら、課税庁から、雨金祭りを受けてクレジットカードのポイントの取り扱いが出ることになるかもしれませんね。ただの個人的な妄想ですが。

三井ホームの不適切会計と工事会計と監査

7月に三井ホームで不適切会計があった旨の報道がされましたが、8月2日に調査結果の報告と、平成28年度の有価証券報告書及び内部統制報告書の訂正がされました。

内容については、内部統制報告書の訂正報告書の一文を以下に引用します。
『当社リフォーム事業部門の一部の従業員が利益計画を達成したと見せかける目的で、売上原価の翌事業年度への先送り、未完成工事の売上前倒し等の不適切な会計処理を行った事実が判明し、過去2事業年度における当該不適切会計処理の決算への影響額が明らかとなりました。』

この事案が財務諸表に与える利益の影響額は約6千万円です。連結売上高が28年3月期で2,560億円、税引前利益で38億円もある大きな会社規模を考えると、この不正な会計処理が財務諸表に与える影響はかなり小さいのではないかと個人的に思います。あるいは、三井ホーム単体では、税引前利益が13億円ですので、影響は小さくないとして公表に至ったのかもしれません。
社内の関係部署で処理をするのでなく、過年度の財務数値を修正し、この不正な会計処理を防止するためのモニタリングが有効に機能されていなかったとして、財務報告に重要な影響を及ぼすことになる「開示すべき重要な不備」と判断したことは、会社のみならず、会計監査の点でも非常に大きな出来事だと思います。コンプライアンスの遵守を強く求める環境や、厳しい会計監査が背景にあるのではと推察されます。

これまでもゼネコンやハウスメーカーといった建築関係の業界では、数々の不正・粉飾会計事案がありました。何故このような事がよく行われるか、様々な要因があると思われます。例えば、ゼネコンが下請け・孫請けに対して力を持ちすぎている、業界慣行として原価管理に対する意識が低い、等々・・・
そこで、前置きが長くなりましたが、今回は、建築業界が決算数値の計上根拠とする、工事会計基準(特に工事進行基準)とそれを監査する難しさについて述べたいと思います。

私も色々な業種の会計監査を経験して来ましたが、ゼネコン・ハウスメーカー・不動産仲介管理業者等の会計監査にも数年間従事していました。そこでいつも思っていたことは、「難しい、数字が正しいか不安、会社の説明が本当か確証が持てない」こんな事が頭によぎります。恐らく他の同業者の方もそうでしょう。

何がそうさせるのか、それは工事会計、特に工事進行基準には「見積り」の要素が多く含まれるからです。
工事進行基準をごく簡単に説明すると、工事の進捗に従って売上や原価を計上するというものです。つまり、100のうち50が出来たら半分の売上と原価を計上します。言えば簡単ですが、家を建てたり、リフォームしたこと経験があればわかりますが、工事の見積価格、仕様、期間なんて変わることもざらです。会計的には、こういう部分を「見積り」というのですが、売上、原価、期間(進捗率)大きくこの3つに見積りの要素があるために、数字の正しさを立証するための監査も困難になります。日本公認会計士協会も、「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」を平成27年に出しており、有効な監査を実施するための細かな手続きを定めています。

今回の事案が具体的にどのようなものかは解りませんが、過去にはこんな例がありました。
事例①
・不正をした理由・・・売上の予算を達成しないといけないので、まだ出来ていない家を完成したことにする。
・監査の手続・・・完成リストからサンプルを抽出し、家を実際に視察しに行く。
普通にしていればバレます。しかし、この場合は、建設途中の家の資材を移動し、窓にはカーテンをかけ、表札もつけて、さぞ人が住んでいるように偽装していました。これでは、視察をしても不正が見抜けません。これで、本当は80しか売上計上できない家が、100の売上になりました。監査人は、施主に電話をしたり、隣人に「お隣さんは引っ越してきましたか?」とか聞けばよかったかもしれませんが、そんなこと普通はしませんし、したとして口裏を合わせされている可能性もあります。
事例②
・不正をした理由・・・利益が足りないので、原価を後で計上したい。
・監査の手続・・・工事のリストからサンプルを抽出し、売上と入金状況、請求書と原価額の一致を確認する。
この場合も、普通にしていればバレます。しかし、一部の工事を施主の引き渡し後の点検で問題があったために追加工事した、などの虚偽の理由で、工事業者と結託して、請求書の発送を遅らせます。こうすると、原価が後回しになるので、一時的には利益が増えることになります。特に小さな工事だと監査人が気付かない可能性は高いです。

このように、悪意を持って不正な会計処理をしようとすると、発見は非常に困難です。監査人は会社の不正な会計処理を発見することが目的ではありませんが、正しい数値が計上されていることを立証するために、あの手この手で監査手続をしています。

不正を防止するための最も重要なことは、会社の内部統制が効いていることです。事例の不正も、内部統制が有効であれば防げたでしょう。経営者の誠実性、社内環境、社風から始まり、業務マニュアル、承認状況、モニタリング、業務監査、内部監査等々、内部統制のサポートがないと会計監査だけでは実効性を持ちません。どの業界でも内部統制は重要ですが、特に建設業は高度で強力な内部統制を構築する必要があると思います。

PCデポの財務数値を、会計監査的に増減の要因分析をしてみました。

 芸能関係で色々重大ニュースがあった、2016年8月24日ですが、Yahooニュースをはじめとして、PCデポ関連の記事が多数出ていますね。すごい盛り上がっているので、株価も含めて関心事の一つになっています。

 今まで有価証券報告書で開示されている数値を全く見たことなかったです。会計監査人は会計監査をするに当たって、監査を通じて得られた情報を基に何時間もかけて数値の総括的な分析を実施するのですが、私は何も情報を持ってないので、10分くらいで超簡易的に財務分析をしてみました。いわゆる、当たりをつける、というやつです。対象は2015年3月期と2016年3月期の比較分析です。

 投資家が行うROAROEとかそういう分析ではなくて、数値の増減はどういう理由で生じているのか、増減は矛盾あるものではないか、何か問題はないか。などなどを感じたままにコメントしています。従って、事業が適切であるかとか、会社は誠実に行動したか、とかいう事業の妥当性については全く言及していません。開示された情報のみからコメント・推測しています。

 

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 特に気になる部分について、黄色で塗ってみました。一番気になるところは売上原価です。売上も伸びていますが、売上原価の減少がすさまじいです。この会社はもともとPCや附属のパーツを販売する会社だったと思うのですが、同じように営業をしていれば、そんなに売上原価や売上総利益率は変化しないはずなので、ビジネスモデルが大きく変わった=サポートサービス中心の営業に変わった、と読み取れます。これは、開示されている情報で、会社も重要事項として大きく発表していますね。

 営業利益はセグメント情報を参照しました。インターネット事業は概ね同水準ですが、パソコン事業の利益が大きく増加していることがわかります。やはり、原価のかからない、サポートサービスに力を入れていることがわかります。それに伴い人件費も増加しています。

 次は、BS側から回転期間を見てみます。まず、売掛金の回転期間が大きく延びています。PCやパーツの販売であれば、現金あるいはカード払いなので、回転期間は1か月程度になるはずです。一部、リースやレンタル的な事業を行っており(ネットでは文句を言われまくっている事業です…)、引き落としが年に1回ということなので、回転期間が延びているのでしょうか。或いは、請求額の支払いに対して揉めている契約もあるのかもしれません。監査人としては、売掛金が回収できるかどうか、経営者は回転期間の長期化についてどういう見解を持っているのか、といった点が重要な論点になります。

 買掛金と回転期間ですが、これも大きく減少しています。モノを仕入れて販売する、というビジネスモデルが続いていれば、そんなに変化することはないのですが、減少しているということは、モノの仕入れが減っているということの現れです。

 最後に、色は塗ってないですが、棚卸資産の回転期間が変化していません。普通は仕入れが減れば、モノである棚卸資産も減るはずです。もしかしたら、長期間ではないものの販売できずに滞留気味のモノがあるかもしれません。会計のルール上、売れないモノは一定の月日が経過すると、資産の評価を減少しなければならず、売上原価として計上されます。将来的には収益性を悪くする要因になるかもしれません。棚卸資産の評価が適切に実施されているか、が重要な論点になります。

 どうでしたでしょうか??会計監査をするに当たっては、投資家の人が行うような、儲けを中心とした分析とは異なる見方をしています。増減分析は監査のほんの一部分・一側面ですが、そうなんだー、と思ったとか、当たり前だろ、とか思っていただけたら嬉しいです。

 

 

 

公認会計士試験 新聞の記事これって本当なの?

22日の日経新聞にこんな記事が出ていました。なんか解せません。
以下は記事の引用です。

公認会計士・監査審査会はインターネットを使って公認会計士の試験を受けやすくする。22日に同審査会のホームページに特設サイトを開設、26日から申し込みや受験料の払い込みができるようになる。これまでは紙の書類による出願がほとんどだった。会計士試験の受験者数は減り続けている。利便性を高め、受験者の増加をめざす。
 受験者は特設サイトでメールアドレスやパスワードを設定し、必要項目を入力すればネット出願できるようになる。受験料はネットバンキングやATMで払い込める。郵送による申し込みも従来通り受け付ける。
 昨年の公認会計士試験の受験者数は約1万人。

という記事です。なんか変なのですごい気になります。
確かに今までは、受験票は書面での提出でした。ちょっとは時間がかかります。ただ、これがWebで出願出来たら受験生増えるんですか??

なんやかんや言われますが、公認会計士試験は勉強時間が5,000時間程度かかると言われていて、多くの人はもっと時間をかけて勉強してるんです。
Webで出願できたとして、その時間の差は高々5分10分でしょ。そんな差で、誰が茨の道を歩むのですか??5分の差は5,000時間に勝りますか?

受験するのが便利になったのは事実ですが、こんなことは受験者の増加に繋がる訳がないです。単純に便利になっただけです。

これがもし、公認会計士監査審査会の公式見解なら失望しますが、でないなら、記者の方にはもっと論理的な思考をしていただくように望みます。

公認会計士試験お疲れ様でした。就活はどうします?

 8月19日から21日まで、このくそ暑い中論文式試験お疲れ様でした。テストそのものも大変なのに、答案回収でも長時間待たされたということで‥

 しばらくは、ゆっくり頭と体を休めてください。合格発表まで、短期バイトしてお金貯めて旅行なんかもいいと思います。とりあえず、やりたいことをやりましょう。働き出すとなかなかまとまった時間が取れませんから。

 と、その前に監査法人の就活が始まりますね。私も何年かリクルーターやってました。今年は相当売り手市場っぽいですが、受験生の方で見ている人がいるかはわかりませんが、ちょっとだけアドバイスを。

 もうすぐ説明会が始まると思うのですが、まだ行ってない方は絶対に行きましょう。もし、テストの出来が悪いと諦めていても、可能性はたっぷりあるので顔を出しましょう。参加して、自分を監査法人に知ってもらうべきです。監査法人のリクルーターに名刺ももらっちゃいます。わからないことがあればメールして質問すれば答えてくれるはずです。チャンスがあればコーヒーやご飯に連れて行ってもらうと尚良いです。

 私がいた法人では、エントリーシート書いて、何回か面接して、最終的にはパートナーの合議で採用が決まっていましたが、リクルーターからの情報や印象はかなり重視されていました。逆に、学歴とか、何番で受かったとか、そんなことはあんまり重要視されません。背中に順位と学校を書いて仕事することなんて絶対にありませんから。プロフェッショナルとして努力すれことが重要です。

 自分の将来に大きく関わりますので貪欲に積極的に。色んな法人から話を聞いて、それぞれの雰囲気を確かめて、自分の感覚と合いそうかどうか確かめて下さい。

PCデポの開示情報を見て思ったこと

 PCデポの販売方法が取り上げられて、ネット等での盛り上がりがすごいことになっていますね。株価も1週間前は1,400円でしたが、一気に1,000円まで下落していました。PCデポ東証一部の会社なので、有価証券報告書等で事業の内容や業績が公表されています。この会社の販売方法がいいか悪いかは横に置いて、会計士としては、どのような開示がされているかが気になったので見てみました。

 平成28年3月期の有価証券報告書の業績の概要を引用しています。ちょうど、中段あたりの、『さらに、当社主力の~』という部分が、今回問題になった、解約に際して多額の解約料を請求していたとされるサービスのようです。

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  ちょっと、気になる部分があります。『デバイスや周辺機器を含むサービス一体型商品の拡大を図りました。』提供しているサービスは、保守契約だけではなさそうです。リースかレンタルもやっているのかな、と思いながら某掲示板を見ると、ニュースがありました。

 例えば、5TBのHDDを買うと、1TBはHDDの現物で、残りの4TBについてはクラウド上のHDDがついてきて、このクラウドで提供されるサービスについて毎年利用料を支払うようです。

 なるほど、リースというかレンタル事業もやっているようですね。どのくらいの規模なんですかね。有価証券報告書からは読み取れませんでした。

 リース会計ではファイナンスリースとオペレーティングリースがあり、それぞれ会計処理が異なります。ファイナンスリースの条件としては、ノンキャンセラブル(契約の解約料がリースした商品を買うのと同等に必要)とフルペイアウト(リースした商品から得られる経済的な利益と費用をリースの借り手が実質的に負担すること)を満足する必要があります。詳細な契約がわからないので予測になりますが、先ほどの取引でいうと、クラウドのHDの利用をやめることは可能でしょうから、ファイナンスリースには該当しなさそうです。この場合はオペレーティングリースになります。

 ファイナンスリースでもオペレーティングリースでも、リースの貸し手側は、リース資産の金額をBSに記載する必要があります。下の表は芙蓉総合リース株式会社の平成28年3月期のBSです。

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 賃貸資産と社用資産と書かれているので、リース事業用と自家使用で固定資産を分けていることがわかります。次の表は、PCデポの平成28年3月期のBSです。特に分別がされていませんね。

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 次に、重要な会計方針を見てみましょう。下は芙蓉総合リース株式会社です。こちらも、リース用と自家使用の固定資産で減価償却の方法が違っていることがわかります。

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 こちらは、PCデポの重要な会計方針。減価償却の方法は分けられていませんね。

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 という訳で、リース資産の”リ”の字も有価証券報告書には記載がなさそうです。違和感を覚えないこともないですが、きっと理由があって記載していないのでしょう。例えば、事業に占める割合がとても小さいので、記載していないのかもしれません。あるいは、私の取引の捉え方が全く見当違いなのかもしれません。

 会計監査は、それぞれの取引の内容や契約を詳細に検討して、決算数値が正しいことを証明する業務です。検討することは多種多様に亘り、上場会社では年間で延べ何千時間もの作業が必要になります。従って、全くの外野の人間がとやかく言うものではありませんので、この辺でStopしておきます。